まずratの背部に作成した皮膚欠損創傷に対し、同種骨髄移植を行い骨髄細胞の創傷治癒への関与を検討した。同種rat大腿骨より採取した骨髄から単核細胞(BMMC)を分離し、これを蛍光標識し、control (D-PBS)、BMMC+PBS、BMMC+末梢血、末梢血のみの4群に分け、collagen spongeに浸透させ皮膚欠損創に移植、2週後に創面積測定と試料採取を行い病理組織学的検討を施行した。創面積はBMMC+末梢血群で最も縮小した例が観察されたが、全体としては個体差が大きく有為差を認めなかった。BMMC+PBSおよびBMMC+末梢血群でDiI(+)の血管内皮細胞、筋線維芽細胞と思われるspindle cellが確認され、創傷治癒への関与が証明された。 次に難治性潰瘍モデルとして放射線照射皮膚に作成した皮膚欠損創における創傷治癒改善効果に関する検討を行ったが、至適実験条件が得られず、また並行して検討したヒトの難治性潰瘍の病理組織学的検討によりratに同様の病態を作成するのは困難と判断した。 一方でわれわれは学内倫理委員会の承認のもと、難治性潰瘍に対する自家骨髄を用いた治療を開始した。治療の際患者の同意のもと難治性潰瘍、骨髄移植後の肉芽を採取し各種免疫組織学的染色を併用し病理組織学的検討を行った。難治性潰瘍ではα-smooth muscle actin (SMA)^+、Factor VIII^-の病的な筋線維芽細胞の増殖による瘢痕化したmatrixを認めた。また潰瘍面の新生血管よりも表層にこの細胞が存在した。骨髄移植後の良好な肉芽ではα-SMA^+、Factor VIII^+の筋線維芽細胞が新生血管を取り囲み、潰瘍表面には筋線維芽細胞の裏打ちのないCD31(+)血管内皮前駆細胞による管腔形成を認めた。また難治性潰瘍の病的筋線維芽細胞が肉芽形成に関与していないことを確認した。
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