研究概要 |
本研究は、抗原であるデスモグレインIの表皮での発現量と局在の差によって、尋常性天疱瘡との臨床症状の差が説明されるにとどまり、その水疱形成のメカニズムについて詳細な解析はいまだなされていない落葉状天疱瘡をモデルに、落葉状天疱瘡抗体によって惹起されるデスモソーム蛋白質のリン酸化とデスモソーム構成分子間の結合能の変化を中心に検討し、尋常性天疱瘡との水疱形成メカニズムを比較することにより、細胞骨格・接着分子の機能解析をすすめようとするものである。本年度は、ヒト有棘細胞癌由来株DJM-1細胞における落葉状天疱瘡抗体添加による、デスモグレインI, III,プラコグロビン,デスモプラキン,デスモコリンのリン酸化と結合性の変化の検討を課題とした。天疱瘡患者で、ELISA法を用いて測定した、抗デスモグレインI, III抗体の抗体価の推移と治療薬による臨床効果の経過を詳細に観察し、抗体価と臨床症状が並行する症例ばかりでなく、同一症例でも抗体価のプロフィールが臨床症状と並行しない時期がある症例があることを示し(第24回水疱症研究会2002年10月発表)、抗体のエピトープの差が水疱形成メカニズムの差に反映される可能性が示唆され、今後の計画において落葉状および尋常性天疱瘡患者血清の精製にあたっては、臨床症状も指標とした個体抽出の必要性を得た。免疫沈降法によって蛋白質精製を行い、デスモグレインIII,プラコグロビンについてはその条件を確定した。デスモグレインIについては、現在までに3種類の抗体を用い、抽出条件を検討したところ、分化と増殖がともに起こるDJM-1細胞では、デスモグレインIの発現量が不十分で、正常ヒト角化細胞のカルシウム濃度依存性分化系モデル(0.09mMから1.8mMにカルシウム濃度をシフトすることによる角化モデル)を用いて、今後の検討を進めるべきという結果を得るに至った。
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