研究概要 |
遺伝性皮膚疾患であるダリエ病、ヘイリーヘイリー病の発症メカニズムの解明を目標に正常ヒト角化細胞を用い,種々の条件下での両疾患遺伝子の発現動態を観察した。現在、両疾患の発症機構はhaploinsufficiency (遺伝子産物の絶対量の不足)が考えられている。これを証明しうる結果が得られた。 1)両疾患の好発部位である脂漏部での発現が低値となっていた。 2)両疾患の増悪因子である紫外線照射により両疾患のmRNA発現量は著明に減少した。 3)カルシウム添加により両疾患遺伝子の発現量は著明に増大した。 4)炎症性サイトカインの添加により両疾患は異なる反応を示した。IL-1α,IL-6に対しては発現量はいずれも減少したが、TNFα、IL-8添加により異なる挙動を示した。 5)紫外線照射後に3)の各々のサイトカインに対する抗体を添加し、両疾患遺伝子mRNAの発現変化を確認した。結果、IL-6抗体添加の系では紫外線照射による発現量低下を著明に抑制した。 以上の結果より両疾患の特徴ある皮疹の形成、紫外線などの環境による悪化が遺伝子発現量の変化により説明でき得る可能性が示された。今後も両疾患のプロモーター領域の解析など発症メカニズムの解明の基礎的データの蓄積を施行していく予定である。
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