アトピー性皮膚炎の病態は、皮膚炎発症後に得られたサンプルによりデータ解析が行なわれていたが今回の研究では、皮膚バリア機能の評価を新生児期より行ない、皮膚バリア機能と皮膚炎発症時期について検討し、アトピー性皮膚炎発症のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 結果:新生児の経表皮水分蒸発量(以後TEWLと略す)は、成人と比較して高い傾向にあった。これは、新生児は出生までは母体の羊水に漬かっているため、出生後は生理的乾皮症を生じると言う、従来の説を裏付けるものと考えた。さらに乳児期でもTEWL値は高く、皮膚バリア機能は成人より低いと考えた。また、乳児湿疹患者の皮疹部のTEWL値を測定したところ、健常部と比較して高い傾向があった。しかしその差は、成人のアトピー性皮膚炎患者の皮疹部と健常部の差より小さかった。 本研究では、ラウリル硫酸ナトリウムのパッチテストを用いて皮膚バリア機能を評価しているが、新生児及び乳幼児では、静止した状態で正確に測定するのが非常に難しく、また値の変動も大きいため、測定方法に更なる工夫が必要と考える。特に乳児湿疹などアトピー性皮膚炎と関係なく発症する皮疹も多く、アトピー性皮膚炎の皮疹部の評価には苦慮した。また、成人のアトピー性皮膚炎では、細胞間脂質のセラミド量の低下が認められているため、現在テープストリッピングを用いて新生児期、乳児期の角層の構成に違いがないか検討中である。今後、母集団を増やし、新生児期からの皮膚バリア機能の変化を観察し、皮膚バリア機能障害の発症時期および障害程度が成長にともないどのように変化するのかを調査し、アトピー性皮膚炎の発症との関連性を明らかにしていきたい。
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