体幹部プレート、吸引式バックロック、体幹部固定用シェルおよびアームホールドを一体化した体幹部定位照射用固定システムを作成、予備実験を行った結果、体幹部固定用シェルにより患者腹部の動きが制限され、呼吸性移動が小さくなるとともに、安定した呼吸位相が得られることが確認された。また、学内倫理委員会にて肺癌を含む体幹部腫瘍に対する定位放射線治療が承認されたのをうけ、まずは、固定精度と安全性確認のため、上記固定システムを用い呼吸性移動が10mm以内の肺腫瘍を対象に定位放射線治療を開始した。 対象は原発性肺癌4例(5病変)、転移性肺癌4例で、男性2例、女性6例、年齢は54-85才である。腫瘍型は10-35mm。原発性肺癌の臨床病期は、1期3例(4病変)、術後再発1例で、扁平上皮癌2例、腺癌2例、小細胞癌1例であった。転移性腫瘍の原発巣は子宮癌3例、中咽頭癌1例であった。治療法はノンコプラナー固定7門照射、1回12Gy、総線量48Gyとした。線量処方はアイソセンターでおこなった。CTおよび正側のX線写真にてセットアップエラーを解析した結果、左右方向2-5mm、前後方向1-5mm、頭尾方向2-8mmで、平均では全方向で5mm以内の固定精度が確認された。初期治療成績は、CR2例(3病変)、PR6例(6病変)と全例でPR以上の効果が得られ、観察期間はまだ2-9ヵ月と短いが、再発および重篤な有害事象は認められていない。 以上より、本体幹部固定システムの固定精度および治療法の安全性が概ね確認できた。次年度は10mm以上の呼吸性移動を認める腫瘍にも対象を拡げ、それらに対して、本研究の最終目的であるところの、吸気呼吸同期照射の精度検証と臨床的有用性を行う予定である。
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