研究概要 |
1.平成14年度 初年度では,まず拡散テンソルを使った神経線維描出の基本ソフトの開発を行った.予定では初年度から正常被検者の募集を行い,対象者全員の撮影を達成する計画であったが,神経線維描出のソフト開発に時間がかかることが分かり,これに専念するために研究計画に述べたデータの収集は次年度に持ち越して行うこととした.そこで,本年度は3次元コンピュータグラフィクスの手法を利用して,トラクトグラフィーによる脳の各部位における拡散異方性の視覚的評価法を開発し,学会および論文発表した.また,トラクトグラフィーを使った皮質脊髄路の簡易描出法としてone-ROI法とtwo-ROI法を比較検討も論文発表した.対象は健常ボランティア5名(平均34.8±3歳,総て男性)であり,左右合計10大脳半球について評価した.single-shot echo-planer imagingによる拡散テンソル画像の収集はGE社製Signa Horizon LX1.5Tを用いた.開発したトラクトグラフィーは汎用表示ソフトウェア(VOLUME-ONE)と拡張ソフトウェア(VizDT-II)による拡散係数最大方向の追跡表示である.任意断面上の任意形状関心領域(ROI)による開始点と標的領域の設定ができる.Two-ROI法では開始ROIおよび標的ROIの両者を通過するものが表示される.開始ROI内では一定密度の開始点から軌跡の計算が始まる.また,軌跡上の各点の拡散異方性に応じた色づけができ,最大追跡方向の信頼性が分かる.つまり,赤色は線状拡散,黄色は面状拡散で,白色は球状拡散を表す.異方性(FA値)や見かけの拡散係数(ADC値)による軌跡終端条件などの各種設定も出来る.今回の検討によりone-ROI法およびtwo-ROI法を使ったトラクトグラフィーで簡便に皮質脊髄路が描出されることが確認された.トラクトグラフィーは梗塞などの白質病変による臨床症状の説明や予後予測,脳腫瘍の浸潤評価やナビゲーションなどにすぐにでも応用できると期待される. 2.平成15年度 次年度(平成15年度)は本来のデータ収集とまとめ,発表にあてる予定である.
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