研究概要 |
3T高磁場MR装置において、7週齢ラットの正常脳組織における定量的な^1H-MRSデータ収集を試み、再現性があることを確認した。脳^1H-MRS測定における局在化手法にはPRESS法を、水抑制手法にはCHESS法を採用し、VOIはラット脳全体を含むように7×7×7mmとした。脳^1H-MRS測定時に、ラット近傍に設置したファントム水(ファントム内純水の^1H濃度を55.6mol/L)を用いて、外部標準法にてNAA, Cr, Cho, Lacの定量化を試みた。 次にラットC6-glioma細胞を細胞培養系にて培養し、抗癌剤ACNU(ニドラン)の濃度を徐々に上げながら、抗癌剤耐性を有するC6-glioma細胞の育成を試みた。その結果ACNUに対して、.通常の非耐性細胞株に比べ、約6倍の耐性能力を有する耐性細胞株の育成に成功した。FDG-PETにおける、ACNUを用いた抗癌剤治療効果判定法を確立する為、非耐性細胞株と耐性細胞株において、ACNUを投与した時の、それぞれのFDG摂取率経時変化を計測した。非耐性細胞株は、ACNU投与後約6時間後から、FDG摂取率が低下することが分かった。一方耐性細胞株は、ACNU投与後約3時間後からFDG摂取率が上昇することが分かった。その結果FDG-PETを用いれば、抗癌剤の治療効果判定が、抗癌剤投与後約6時間後に確認できることが示唆された。 その後、ラットC6-glima細胞を用いたラット脳内移植法を樹立する為、7週齢ラットの脳組織に、C6-glioma細胞移植を幾度か試みた。ラットを生かしたまま、ラットに脳腫瘍を移植させ、成長させる技術を獲得することができた。 今後の検討課題としては、このラットの悪性脳腫瘍モデルでも、安定的に脳^1H-MRSデータが収集できるかどうかを確認することと、脳腫瘍代謝データ収集に一番適した時期を選定することである。
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