本研究では、感度不足というNMRに固有の従来の問題を乗り越えるため、超偏極希ガス製造装置を開発し、これを連続フロー型としてNMRに導入することにより、飛躍的に感度の増強された^<129>XeのNMR信号の連続観測を可能とする。平成14年度では、超偏極^<129>Xeガスの連続フロー式製造時において約6000倍の感度増強を達成した。本年度では更なる偏極効率の追求を行い、光ポンピング法による超偏極希ガス製造時に使用するレーザーの高出力化、及び希ガス組成、圧力の最適化により、連続フロー式製造時において約10000倍の感度増強を達成した。この連続フロー式製造時における^<129>Xeガスのフロー量は約35ml/分、即ち約2l/時間であった。 本装置を使用してマグネット内のマウスに定常的に超偏極^<129>Xeガスを供給し、肺から血流を介して脳組織へ移行した^<129>Xe-NMR信号を観測したところ、血漿中に溶解したガスに由来する信号に加えて、脳組織に溶解したガスに由来する2本の信号を明瞭に認めた。また、この脳組織に溶解した信号を利用して、国内で初めて脳形態画像の取得に成功した。超偏極^<129>Xeを持続投与したのち、投与をやめた時の脳からの^<129>Xe-NMR信号の時間変化から得られる洗い出し曲線を解析することにより、局所脳血流速度を定量的に評価した結果、速度として93±41(ml blood/100g tissue/min)を得た。この値は、核医学的手法により得られた値とほぼ同程度であり、被爆を避けることができるなど、本手法の優位性を確認することができた。今後、測定精度の更なる向上を目指すとともに、緩和時間の変化から酸素飽和度、酸素摂取率などのパラメータを定量的に見積もることを試みる。
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