平成14年1月から12月までに、乳腺腫瘍を疑われてImm slice厚の造影MRI検査を行われた120症例中、手術にて組織型が判明したのは83症例であった。このうち乳房切除術が行われたのは36症例であったが、腫瘍摘出術後に乳房切除術が行われた11症例は病理組織標本での病変分布地図作成が困難と考え除外した。残る25症例中、乳癌の範囲が乳腺の半分を超えず、良好なMRI画像を得ることができた10症例を対象とした。組織型は乳頭腺管癌7例、硬癌3例であった。 切除された乳腺組織は腫瘍の中心と乳頭を結ぶ線にて割を入れ、これを基準とし全割面の病理組織標本を作製した。すべてのプレパラートの画像を顕微鏡に接続したデジタルカメラを経由し、コンピュータに取り込み割面の合成画像を作成した。また検鏡により癌組織の広がり、乳腺症などの病変の範囲を決定し、分布地図を作成した。なお病変の診断、範囲の決定には必要に応じて認定病理医の指導を仰いだ。 MRI画像は造影後T1強調画像および造影後差分画像より、病理組織の割面と一致する再構成画像を決定し、これを基準とし全体の再構成画像を作成した。まず基準とした割面でのMRI画像と病理組織所見の比較を行った。全例にてMRIでの乳癌病変の描出は良好であった。7例に乳管内進展を認め、MRIでの指摘は可能であった。しかし、1例にMRIにて指摘困難であった乳管内進展が約1cmに渡り認められた。硬癌の1例ではMRIで乳管内進展と診断したが、実際はリンパ管内進展であった。小葉増生症、硬化性腺症、アポクリン化生がMRIにて小結節として描出されたが、MRI画像上癌組織との鑑別に有用な所見は指摘困難であった。 基準面以外の割面では、切除後のホルマリン固定による乳腺組織の変形のため厳密な画像と病理組織の比較が困難であった。このためコンピュータ・ソフトによる病理学的病変分布地図の3次元表示とMRI画像の3次元表示を比較するための検討を開始した。
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