平成15年1月から12月までに、乳腺腫瘍を疑われMRI検査を行われた131症例中、手術にて組織型が判明したのは76症例であった。このうち乳房切除術が行われたのは31症例であったが、腫瘍摘出術後に乳房切除術が行われた6症例、術前化学療法を施行された8例は除外した。残る17症例中、乳癌の範囲が乳腺の半分を超えず、良好なMRI画像を得ることができた10症例を対象とした。 組織型は乳頭腺管癌5例、硬癌3例、充実腺管癌2例であった。切除された乳腺組織は腫瘍の中心と乳頭を結ぶ線にて割を入れ、これを基準とし全割面の病理組織標本を作製した。すべてのプレパラートの画像を顕微鏡に接続したデジタルカメラを経由しコンピュータに取り込み割面の合成画像を作成した。また検鏡により癌組織の広がり、乳腺症などの病変の範囲を決定し、分布地図を作成した。 作成された病変分布地図画像を画像解析ソフト、NIH Imageに取り込み、3次元的な乳腺内の病理学病変分布地図を作成した。MRI画像は造影後差分画像よりMIP画像を作成し、病変の3次元的な広がりを把握できる表現とした。 3次元的病変分布地図とMRIのMIP画像との比較を行った。全例にてMRI MIP画像での乳癌病変の描出は良好であった。8例に乳管内進展を認め、MRIでの指摘は可能であった。ホルマリン固定による乳腺組織の変形と腹臥位で撮影されたMRI画像の厳密な比較は困難であるが、病変の範囲および乳管内進展の広がりの直感的な把握は3次元画像のため容易であった。しかし乳腺症も造影MRIで増強される小結節として描出されており、厳密な癌組織との鑑別は指摘困難であった。 平成16年より全乳腺のDynamic MRI撮像を開始し、病変の増強パターンも検討項目として追加し、さらなる精度の向上を目指す試みを開始した。
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