高度拡散強調画像の有用性を通常の拡散強調画像と比較するため、エコー時間や拡散時間を一定にしたままb値を自由に変化できるMRIパルスシーケンスを開発した。また、得られた拡散強調画像データからmean diffusivityを計算しマッピングするソフトウエアを開発した。これらを用いて、高度拡散強調画像のアルツハイマー病における白質変性の描出能を検討した。対象は、九州大学医学部附属病院でアルツハイマー病と診断された7人の患者と、年令をマッチさせた7人の正常被験者であった。脳血流SPECT画像から変性があると予想された両側頭頂葉の皮質下白質と、変性がないと予想された後頭葉白質のmean diffusivityを、b値を1000、2000、4000s/mm^2と変化させながら測定した。その結果、(1)アルツハイマー病患者では、頭頂葉白質のmean diffusivityが正常者に比較して有意に増加していること、(2)その増加率はb値が大きくなるに従い増加すること、(3)後頭葉白質では、患者と正常者の間で有意なmean diffusivityの違いはみられないこと、(4)後頭葉白質を内部標準にして計算されたlesion-to-normal contrastおよびcontrast-to-noise ratioはb値が大きくなるに従い有意に増加すること、が示された。これらの結果から、高度拡散強調画像を用いることで、白質の変性をこれまでより感度よく描出できると結論された。 これらの成果は、論文発表するとともに、第30回磁気共鳴医学会シンポジウムで発表された。
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