アルツハイマー病(AD)における初期段階の特徴的な脳病変として老人斑が知られている。本研究は、その主要な構成成分であるアミロイドβタンパク(Aβ)に注目し、Aβ結合性放射性薬剤の開発およびその有効性の評価を目的とした。そこで、インビトロにおいて老人斑アミロイドに親和性を有することが知られるチオフラビン-Tの化学構造をもとに、置換基の異なる数種類の新規放射性ヨウ素標識ベンゾフラン誘導体の設計・合成および老人斑アミロイド画像化薬剤としての有用性の基礎的評価を行った。ジメチル、メチル、メトキシ、ヒドロキシ基を側鎖に有するフェニルベンゾフラン誘導体はいずれも高収率での合成に成功した。またAβ(1-40)凝集体を用いたインビトロ結合実験の検討より、置換基の種類・導入位置にかかわらず、ベンゾフラン誘導体はいずれもAβ(1-40)凝集体に高い結合親和性(Ki=0.4-7.7nM)を示した。さらに正常マウスにおける体内放射能動態を検討したところ、投与初期に化合物の脂溶性に伴う高い脳移行性を示した。しかし、脳内成分との非特異的結合のため、すべての化合物において脳からの放射能消失は遅延した。 以上より、脳内放射能滞留を解消するための更なる分子修飾の必要はあるが、置換基の種類、導入位置にかかわらず、脳への高い移行性およびAβへの高い親和性を示したフェニルベンゾフランの分子骨格は、AD老人斑アミロイド画像化薬剤の開発に有用である可能性が示された。
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