研究概要 |
外傷等による臓器損傷等の止血目的に行われる緊急血管塞栓術は早期失血死を防ぐ意味では効果的であるが、臓器機能障害などの合併症を起こしうる。過去の当院の医療記録調査から、1、緊急血管塞栓術を行った99例中3例が24時間以内に死亡、32例が臓器障害などにて24時間以降入院中に死亡していた。2、受傷後6時間内にMAP6U以上輸血した症例中61%は死亡、6U未満のうち90%は生存した。3、塞栓術後の収縮期血圧が100mmHg以上の症例中85%は生存、100mmHg未満のうち70%は死亡した。4、塞栓術後の拡張期血圧50mmHg以上の症例中88%は生存、50mmHg未満のうち82%は死亡した。5、合併外傷の観点からはISS score 35以上の症例中60%が死亡、35未満のうち73%が生存した。 以上から臓器障害や予後に血行動態の重要性が示唆されたため、doppler guidewireを用いて局所の血流をaverage peak velocity (APV, cm/sec)として調べた。対象は正常2例、損傷3例(肝、脾、骨盤骨折それぞれ1例)である。結果、固有肝動脈のAPVは正常26±4、損傷例32、塞栓術後4、脾動脈のAPVは正常48±5、損傷例41、塞栓術後7、内腸骨動脈のAPVは14±3、損傷例11、塞栓術後2であった。損傷例のその後の予後や臓器障害については経過観察中である。 研究計画にて予定していた動物実験は現在準備中である。
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