X線CT撮影は一般的なX線撮影に比べ、患者の被ばく線量が比較的高い。放射線防護の最適化のためには、被ばく線量を評価する必要がある。実測では困難なX線CT撮影時の患者の被ばく線量を、モンテカルロシミュレーション法による計算で評価した。計算コードとして、放射線のモンテカルロシミュレーションプログラムとして定評のあるEGS4を用いた。計算環境は、CPUがPentium IV、OSがLinux、Fortran Compilerがg77である。 EGS4のユーザコードには、ジオメトリとしてボクセルファントムの幾何形状を組み込んだ。このファントムは、日本原子力研究所で開発されたもので、日本人成人男性のX線CT撮影の画像を基に、約663万ボクセル(各1×1×10mm)で構成されている。大きさは身長172cm・体重62kgで平均的なサイズである。各ボクセルの材質として、MIRD-5型ファントムと同様、軟組織・肺・骨に相当する3種類のORNLの物質データを割り当てた。テーブル等の周辺装置類は、ジオメトリには組み込んでいない。 計算対象とするX線CTの撮影条件は、種々の部位の撮影を想定し、それぞれの照射位置・スライス数・スライス厚・電圧等を設定した。実際のX線CT装置を参考に回転軸と管球焦点の距離を決め、2π方向からX線を発生させた。各電圧とフィルタ厚に対応するX線スペクトルには、Birchらのデータを用いた。 計算の結果、予想された通り直接照射野に入る臓器の線量が高い結果が得られた。入射線量あるいは中心軸等の基準点との比を採ることにより、管理における測定値から各臓器の線量と実効線量を算出可能であり、臨床の場における最適化への応用が期待できる。
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