前立腺癌の小線源治療期間中にアプリケータ針(以下針)の移動があると、計画通りの照射が不可能になる。当院では3日間の小線源治療期間中に計5回の照射を行なっており、各照射の前に模擬線源(18本)を挿入した腹部単純写真を撮影し、針の移動を確認している。今回、単純写真を利用して留置期間中の針の移動について検討した。平成12年11月から平成14年8月までに小線源治療が行なわれた30例を対象とした。左右の閉鎖孔下縁を通る線を基準とし、頭方向を+、尾方向を-として各照射間の針の移動距離を測定した。また、前立腺内に挿入してあるマーキング用金属片を基準にして同様に測定した。結果は、照射1回目から2回目の間で、針の平均移動距離は絶対値で2.6mmであった。同様に2-3回目1.8mm、3-4回目1.5mm、4-5回目1.1mm、1-5回目は3.4mmであった。頭尾方向への移動の平均(1回目を基準とした座標)は1-2回目-1.5mm、1-3回目-2.0mm、1-4回目-2.1mm、1-5回目-2.5mmであり、移動の方向は、尾側方向が主であるが、23.3%(7例)が頭側方向であった。一方向に5mm以上移動した症例の割合は33.3%(10例)であった。金属片を基準にした場合、1-5回目の絶対値の平均は4.1mmであった。当院では基準を恥骨結合ではなく、閉鎖孔下縁を通る線とし、X線束のずれによる測定誤差を少な<する工夫をした。針の移動は1回目から2回目の照射の間で大きく刺入および照射による浮腫が原因のひとつである可能性が示唆された。針の移動距離の測定では基準を閉鎖孔下緑と金属片のどちらでもよいと考えられた。
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