脳functional MRI(fMRI)と術中脳機能マッピング(MAP)から術前および術後に同定される脳機能野(運動および言語中枢)とを比較し、fMRIの臨床的有用性を確立する目的で本研究を行っている。 <方法>MR機種は東芝EXCELART1.5T。fMRIのtaskは、運動野に関しては掌握運動、言語野に関しては「しりとり」として連続した単語を考えるよう指示した。画像処理は、東芝オリジナル解析ソフトとstatistical parametric mapping 99(SPM99)による2つの方法でそれぞれ行った。MAPでは、運動野は術中刺激でのSEP、MEPの電流発生部位、言語野は覚醒下手術での語停止部位をそれぞれ確認した。<結果>テント上神経膠腫でfMRIとMAPにより脳機能野(運動野17例、言語野5例)を同定できたのは18例だった。fMRIでの賦活部により運動野が同定されたものが17例中15例あり、このうち腫瘍と運動野とが離れていたものが10例、運動野が直接的に圧排されていたものが5例であった。fMRIでの賦活部の評価不能であった2例では、腫瘍により運動野が浸潤されていた。言語野がfMRIで限局性の賦活部として同定できたものは5例中4例で、各々腫瘍の一部は言語野に浸潤していると考えられた。このうち2例で術中の言語停止部とfMRIの賦活部とは一致し、他の2例ではfMRIの賦活部は腫瘍と離れた部位に認められた。<考察>運動野については、fMRIと術中刺激の焦点とはほとんど一致するが、同部に腫瘍浸潤がある場合に評価困難となりうる。言語野については、腫瘍浸潤の有無に関わらず、fMRIとMAPとの焦点の関連性が明らかではなく、今後の研究では臨床症状との関連、task、解析にあたっての閾値の設定などを見直す必要があると考えている。
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