研究概要 |
【目的】多発性硬化症(MS)に対し、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を用いて大脳代謝物のスペクトルを検出し、臨床症状、経過との関連について検討、臨床応用の有用性を検討する。【対象】MS36例(男:女12:24、平均35.3歳)。正常ボランティア8例(男:女2:6、平均39.0歳)を対照とした。【方法】1.5T MRI(TOSHIBA EXELART^<TM>)、Single voxel法(2×2×2cm^3)で、脱髄斑を含む大脳白質及びNormal appearing white matter(NAWM)に関心領域を設定し、N-acetylaspartate(NAA)、Creatinine(Cr)、Choline(Cho)の各ピークを検出した。再燃例では、急性期、治療後のスペクトルの変化についても検討した。撮像シークエンスはPRESS法、RFパルス0°、180°、180°、TR 2000msec、TE 136msec.、水抑制パルスはCHESS法、スペクトル分析はMRS-PROによる自動解析を用いた。【結果】MS群では対照に比べ、有意なNAA/Cr(p<0.01)、NAA/Cho(p<0.05)の低下を認め、NAWMにおいても、有意なNAA/Crの低下を認めた(p<0.05)。Cho/Crは、有意な変化を認めなかった。経過中に再燃を認めたものが4例あり、うち3例にステロイド治療後に臨床症状の改善とともにCho/Crの低下を認めた。【考察】MSで白質全体でNAA/Crの低下を認めたことは、従来の画像診断法ではとらえられなかった病態を反映し、MSの病態に何らかの関連があると考えられる。再燃時の治療によりCho/Crの低下を認めたことは、病勢の抑制を反映している可能性がある。【結論】MRSは白質全体に変化を反映し,MSの病態把握ができる可能性があると考えられる。
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