研究概要 |
【目的】1H-MRSで成人の大脳,脳幹,小脳の各スペクトルの定量化を試み,検討する.【対象・方法】対象は健康ボランティア9例(男:女=4:5,平均30.3歳).1.5T MRI (TOSHIBA EXELART^<TM>)を用い,位置決めのT1・T2強調画像の撮像後,2×2×2cm^3のsingle voxel法で各々の放線冠,橋,小脳半球に関心領域を設定した.PRES (Point resolved spectroscopy)法を用い,RFパルス0°,180°,180°,TR 2000,TEは136(long TE)と25(short TE)を用いた.水抑制パルスはCHESS法(帯域1ppm),スペクトル定量はLCModelによる半自動解析とした。【結果】long TEでは,放線冠:NAA 20.01±2.13 (mean±SD), NAA+NAAG 23.48±1.23, Creatin 11.08±0.49, Choline化合物 3.81±0.49, 橋:NAA 15.17±7.49, NAA+NAAG 23.48±7.26, Cr 8.13±3.90, Cho 4.99±1.52, 小脳:NAA 20.54±2.12, NAA+NAAG 22.49±0.98, Cr 17.01±1.95, Cho 5.42±0.71, short TEでは,放線冠:NAA 7.23±0.35, NAA+NAAG 7.35±0.32, Cr 4.80±0.35, Cho 1.43±0.33, 小脳:NAA 6.246±0.27, NAA+NAAG 6.50±0.70, Cr 7.41±0.76, Cho 1.73±0.19であった.橋ではアーティファクトのため基線が非常に不整となり,short TEスペクトルの分離は不能であった.【考察】MRSスペクトルは緩和時間の影響があるが,TEを短くすることでT2緩和時間の影響を少なくすることができる.今回の検討では,long TEとshort TEでは約2.8倍の差を認めた.大脳,小脳におけるshort TEスペクトルは非常にばらつきが少なく,臨床応用に耐えうると考えられた.また,大脳に比べ小脳ではCrが高値(P<0.01)あり,従来の定性評価においては留意が必要と思われた.【結論】大脳,小脳における定量化1H-MRSを検討した.定量化には緩和時間の影響の少ないshort TEが望ましいと考えられるが,基線の補正の問題があり,今後の検討が必要である。
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