本研究の目的は、TrueFISPシーケンスに代表されるcoherent SSFP撮像法によって得られる位相画像が磁場の不均一性の影響を受けにくい特徴を持つことに注目し、TrueFISP位相画像補正法を確立し、画像領域分割や信号ノイズ比の向上などに応用することで、臨床支援を行うことである。特に本年度は、ファントム実験を通して位相不均一性の原因を究明し、補正法を確立することを目的とした。 ファントム実験において使用したファントムは、20リットル入りの円筒状ポリプロピレンタンク3つをぞれぞれ、蒸留水+Gd(1mM)、生理食塩水+Gd(1mM)、蒸留水+Gd(1mM)+塩ビ中空筒で満たしたものである。それらを、FOV、受信バンド幅、画像サイズ、スライス厚、スライス方向、スライス位置、撮像シーケンス(シングルスライス、マルチスライス、シネ)を変えたTrueFISP撮像法で撮像し、各コイルから得られた位相の画像空間内変化を調べた。その結果、画像領域分割に利用するケミカルシフト以外で、位相の変化に大きく影響する要因には、大きな磁場不均一性、対象物体のインピーダンス、コイルの持つ位相特性の3つが挙げられることが分かった。 これら3つの要因から起こる磁場不均一性は空間的に非線形であるため、理論上は現在採用している線形補正では限界がある。特に、コイルの位相特性は、空間内に特異点(特異曲線)を生じることがあり、現在用いている繰り返しによる補正アルゴリズムでは収束性が保証されない。しかしながら、コイル感度の高い領域では非線形性が空間的に緩やかであるため、ガントリ中央部で撮影された領域に関しては、実質的には問題ないと思われる。今後は、ガントリ中央部から離れた領域でも補正が可能であるよう、非線形補正アルゴリズムを開発する予定である。
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