本研究の目的は、^1H-MRSによる脳代謝機能の評価と、高解像度3D-MRIによる脳形態学的評価と併用し、分裂病型障害患者と初回エピソードの統合失調症患者とを比較することにより、精神分裂病の発症機序を解明することである。平成14年度は、20代の健常者13名とICD-10による統合失調症患者13名(平均罹病期間=3.7年)を対象として、左右の下前頭回、左右の視床の^1H-MRSデータを収集し、同時に記憶テストであるVerbal leaming taskを施行した。左下前頭回のNAA/Cho比は統合失調症患者群では1.67±0.44で、健常者群での2.13±0.41に比べ、有意に低かった。視床では、いずれの指標にも有意差が認められなかった。Verbal leaming taskにおける総単語再生数は、統合失調症群では、unblocked listとblocked listの両方において健常者群より有意に少なく、blocked listのSCR得点(記憶におけるカテゴリー化の指標)は統合失調症群では有意に低かった。両群における左下前頭回のNAA/Cr比とblocked listのSCR得点との間に有意な正の相関が認められた。また、統合失調症群の左視床のNAA/Crは発症年齢との間に有意な正の相関が認められ、服薬量との間には有意な負の相関が認められた。これらの結果は、統合失調症患者では左下前頭回の代謝機能になんらかの障害があることを示唆し、これまでの結果と一致する所見である。Verbal learning taskの結果は、統合失調症患者における言語記憶機能の低下を示し、左下前頭回機能と記憶の組織化との関連が示唆された。 また、20〜30歳代の健常者、統合失調症患者および統合失調型障害患者を対象として、3D-MRIデータを収集しつつ、前頭葉および側頭葉における体積測定を行っている途中である。
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