研究概要 |
2001年11月から2003年7月までの期間に、京都大学医学部附属病院で生体肝移植手術を受けた67名のレシピエントとそのドナーに対して、手術前に精神医学的半構造化面接と心理テスト(WHOQOL-26、STAI, BDI, Baum Test)を施行し、また同時に心理社会的状態をPACT(移植患者心理社会的評価尺度)を用いて評価したうえで、手術後3ヶ月間精神状態の経過を結果は以下のとおりである。まず、術前に不安を不した患者は約4割、抑うっ状態だった患者は約観察した。 結果は以下のとおりである。まず、術前に不安を示した患者は約4割、抑うつ状態だった患者は約3割で、他の研究者による同様の脳死肝移植患者の結果に比べて、不安の頻度は同程度、抑うつの頻度は少なかった。また、術前に抑うつ的な患者ほど、身体面の経過が良好であるにもかかわらず入院期間が長くなる傾向にあった。精神障害に関しては、術前に精神障害の既往があれば、術後にも同じ精神障害を呈する傾向があるという結果が得られた。また、術前のPACTの点数が低く心理社会的に不安定な患者ほど術後に不安・抑うつ、あるいは意識障害を呈する頻度が高かった。このことから、元来脳死移植待機患者のスクリーニング目的で作成されたPACTは、生体肝移植患者の術後経過の予測にも有用であることが明らかとなった。また、術前のレジピエントとドナーのそれぞれの心理検査の結果は、互いに強い相関があることが確認された。この結果は、従来「シャム双生児効果」と呼ばれてきた、移植術後にレシピエントとドナーが同様の精神状態を呈する現象を、よく説明している。 これらの結果は論文にまとめ、現在臓器移植関連の学術誌に投稿中である。
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