研究概要 |
プライミングとは,先行刺激(プライム刺激)が後続刺激(プライミング課題)の処理におよぼす影響のことを指す。本研究は,視覚探索課題遂行時の統合失調症患者のpriming現象を調べることを目的とするが,そのためにまず健常者におけるプライミングの程度を確認した。 対象は健常者20名とした。呈示図版は,多数の妨害刺激(T字型)の中に一つの標的刺激(L字型)をランダムに配置したスライドを24枚,妨害刺激のみで標的を含まないスライドを24枚用意した。標的を見つけたらすぐにボタンを押すよう被検者に指示し,ランダムな順序で呈示を行った。図版は,コンピュータと液晶プロジェクタを用いて,被検者の1.5m前方のスクリーン上に呈示した。図版の呈示には,独自に開発したソフトウエアを用いた。検査中の被検者の眼球運動を,アイカメラ(nac製,EMR-7型)を用いてビデオテープに録画し,解析を行った。 解析は,誤答(お手つきと見逃し)率,図版呈示から最初の眼球運動が生じるまでの時間(saccade潜時),図版呈示から視点が標的成分に移動するまでの時間(視点到達時間),図版呈示からボタンが押されるまでの時間(ボタン押し時間),標的のない図版呈示直後の眼球運動の象限と,一つ前の図版の標的の象限との一致率(一致率)などを算出した。 実験の結果,図版呈示直後の視点の移動象限がひとつ前の図版の標的の象限と一致する割合は約47%であった。課題遂行時に先行刺激の影響を受けている様子が窺え,このことから健常者でもある程度のプライミングが生じていることがわかった。
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