アルツハイマー病患者は年々増加傾向にあり、その治療法や予防法の発見は21世紀医療の最大の課題のひとつである。アルツハイマー病の危険因子としてはアルミニウム、アポリポタンパクE4、加齢、遺伝子異常、頭部外傷、甲状腺機能低下、教育歴等が報告されており、その防御因子としてはビタミンE、インドメタシン等の抗炎症剤、女性ホルモンなどが報告されている。本研究代表者はアルツハイマー病の危険因子或いは防御因子がアミロイドβタンパクの沈着に対して如何なる影響を及ぼすかを明らかにすべく、ラットの側脳室系を用いた研究を開始した。前年度はラットの側脳室にアミロイドβタンパクを注入し、一定期間後(2日後、1週間後、1ヶ月後)にアミロイド線維の沈着の程度を免疫組織化学的方法を用いて染色し、標本を準備した。更に、光学顕微鏡とデジタルCCDカメラ、解析用コンピューター、プリンター、及び画像解析ソフトを統合し、免疫組織学的に検出されたアミロイドβタンパク領域の定量的解析を行うシステムの構築がなされた。本年度は本システムを用いて免疫組織標本を観察し、組織画像を大容量のデジタル画像として取り込み、定量解析を行うことにより、ラットの側脳室内に投与された相当量のβアミロイドタンパク(約100μg)が時間の経過とともにクリアランスされることを発見した。また、研究代表者は第17回世界精神身体医学会に参加して得られた高齢者疾患に関する知見やインターネット経由でMEDLINEより得られた文献資料を参考にしながら、今回得られた結果を論文としてまとめ、「Neuropathology」誌に投稿した。その結果、受理された。今後はアミロイドβタンパクに加えてアルミニウムをラットの側脳室系に注入し、同様の定量解析を営為行いつつ、ヒト高次脳機能との関連についての考察も行う予定である。
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