【緒言】グルタミン酸の機能異常がてんかん性病態解明のなかで注目されてきた。1990年代初頭にはマイクロダイアリーシスを用いて様々なてんかんモデルでの海馬細胞外液中グルタミン酸定量解析が盛んに行われた。グルタミン酸放出はけいれん時あるいはてんかん性異常獲得後、過剰な放出や慢性的上昇傾向を示すという点で一定のコンセンサスを得たものと考える。1992年以降、5種類のグルタミン酸トランスポーター(EAATs)が次々にクローニングされ、次第にてんかん性病態におけるグルタミン酸考察が、生化学的な定量解析から、EAATs発現に注目した分子生物学的解析へと移行し、その後様々なEAATs発現の異常がてんかんモデルにおいて報告された。【実験】本研究ではまず、カイニン酸てんかんモデルにおけるマイクロダイアリーシスを用いた海馬細胞外グルタミン酸変動解析とEAATsの分子生物学的解析ならびにEAATs機能に直接影響してくるレドックス解析を検討してんかんモデルにおけるグルタミン酸動態とグルタミン酸トランスポーター機能障害の役割について考察した。【結果と考察】EAATsによるグルタミン酸の再取り込みの大部分(60-80%)は、グリア型EAATsが担っていることが知られている。本研究の結果でグリア型EAATsの発現低下と酸化状態に傾きやすい海馬レドックス状態が明確にされ、その結果EAATsが抑制的機能修飾を受け、そのためマイクロダイアリーシスにより確認されるグルタミン酸濃度に深く影響してくると考察された。発作間歇期におけるグルタミン酸上昇は、グリア型EAATsの発現低下や酸化的レドックス状態に大きく起因していると考えられる。Ca++依存性とCa++非依存性の要素を有する脱分極時のグルタミン酸の放出については、カイニン酸てんかんモデルでCa++非依存性上昇の増大が見られたことより、てんかんモデルでのグルタミン酸放出が次第にCa++非依存性を帯びてくることが考えられた。このCa++非依存性放出の多くは、EAAC-1を通じたreverse transportであると考えられており、発現上昇を示していたEAAC-1を通じ、てんかんモデルでは特に大量な逆向き輸送が誘発されると考察された。
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