研究概要 |
平成14年度,強迫性障害患者3例(男性2例,女性1例)について選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を中心とした薬物療法と暴露反応妨害法を中心とした四段階方式の標準化した認知行動療法プログラムに基づく約3ヶ月間の入院治療を行った。入院時および退院時にSPECT検査を施行し,また,入院時に頭部MRIを施行した。臨床症状については日本語版Yale-Brown強迫症状評価尺度(JY-BOCS)を中心とし,強迫傾向,不安・抑うつ症状を含めて,経時的に入院時より退院時まで評価した。臨床症状においては3例ともJY-BOCSのみではなく,強迫傾向,不安・抑うつ症状のいずれにおいても改善が認められ,さらに認知面でも改善した。それにより,当科の強迫性障害に対する標準的入院治療プログラムの有効性が支持された結果となったと考えられる。その中で,強迫性障害の心理・社会的病因,および発症契機により認知行動療法の導入法に工夫を加えることで,当科標準的入院治療プログラムが適切となる症例が増加すると考えられたため,その点について「精神医学」「強迫性障害の研究」にて発表を行った。一方,SPECTにおいても個々の症例においては脳血流パターンの変化が認められたが,症例数が3例と少ないため,全体的に共通する変化としては現在のところ有意な結果は得られていない。平成15年度においても本研究を継続するとともに,さらに症例数を増やし,検討を続けていく予定である。
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