身体表現性障害(SFD)患者では、Quality of Life(QOL)が低下している者が多い。今回、研究代表者は、鑑別不能型身体表現性障害(USD)や転換性障害(CD)患者に対する漢方治療の効果について、QOLの面より検討を行った。 <研究方法>慶應義塾大学病院漢方クリニックを初診にて受診した患者のうち、漢方未服薬でDSM-IVのUSDまたは罹病期間が6ヶ月以上のCDの診断基準を満たす105例のうち、3ヵ月以上にわたり規則的に漢方治療を行っていた90例(男性24例、女性66例、平均年齢44.9歳、平均罹病期間8.4年、USD72例、CD18例)を対象とした。これら90例に対し、患者の同意を得た上で、漢方薬による治療開始前と治療3ヵ月後にそれぞれWHO-QOL-26評価スケールを用いてQOLの評価を行い、漢方治療の前後での得点の変化について比較・検討した。統計解析には、paired-t検定を用いた。 <研究結果>SFDの全般改善度は、著明改善12例、改善34例、軽度改善33例、不変9例、軽度悪化1例、悪化1例であった。また、治療3ヵ月後のWHO-QOL-26評価スケールの"QOL平均値"(3.19±0.42点)は、治療前(3.07±0.47点)と比較して有意な改善(t=-3.63、P=0.0005)を認めた。QOLの領域別では、"身体的領域"、"心理的領域"、"全体"で、有意な改善(P<0.005)を認めた。 <考察と平成15年度の研究予定>オープンスタディの結果ではあるが、漢方治療により、SFD患者の身体化症状が改善し、QOLも向上することが示唆された。平成15年度の研究予定としては、さらに症例の蓄積を行うとともに、研究より得られたデータから、身体表現性障害の主訴別に最も好ましいと考えられる漢方方剤を選定する方法を確立するためのデータベースを作成したい。
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