動物モデル(コカインまたはレセルピン長期投与ラット)を用いてセロトニン2C受容体のRNA editing率を、primer extension combined with denaturing high performance liquid chromatography法を用い測定した。この手法で得られたRNA editing率はcloning and sequencing法により確認を行った。セロトニン2C受容体は5ヶ所の部位でRNA editingを受けるが、投薬処理後ラットの皮質・中脳・海馬の各領域においてこの5ヶ所の部位のRNA editing率に変動は認められないことを明らかにし、セロトニン作動性の薬剤に対してRNA editing系が安定であることの知見を得た。その一方で行動学的鬱病動物モデルであるlearned helplessness ratでは特定部位のRNA editing率の上昇を認め、この上昇が、抗鬱薬であるfluoxetinやimipramineの投与で低下することを見出した。現在、米国スタンレー財団より提供された精神疾患患者死後脳(統合失調症・鬱病・躁鬱病)においても検討を行っている。今後このRNA editing率の変動メカニズムをRNA editingに関わる酵素複合体の活性制御という視点から解析していく予定である。また、もう一方の重要な神経伝達物質受容体であるグルタミン酸レセプターに関して上記手法を用いて多数サンプルの解析を行う。
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