多様な背景疾患を有する血球貧食症候群において、十分な感度と特異度をもち、かつ迅速にリンパ球の腫瘍性増殖を検出することができれば、血球貧食症候群の鑑別診断や治療戦略の決定に有益な情報を与えるものと期待されることから、IgH/TCR解析を中心に、臨床的特徴やflow-cytometry解析や他のデーターを絡めて、血球貧食症候群の病因とこれら解析法の診断的意義を検討した。その結果、PCR法によるIgH再構成は、感染・膠原病など、良性疾患を背景とする血球貧食症候群では検出されない一方で、B細胞性悪性リンパ腫、ことに血管内リンパ腫では高率にclonalityが証明された。TCRについては、β/γ鎖について検討をおこなったが、特異性に乏しく、どのような背景疾患であっても高率にclonalityが検出された。B細胞性悪性リンパ腫(血管内リンパ腫)は節性病変をとらない一方、病状が急激に悪化するため侵襲的な検査は制限されるため、生前診断は困難とされる。この極めて特殊な病態をとる悪性リンパ腫の診断にIgH-PCRは有益であることを、症例を蓄積したうえで更に詳細に検討をおこない証明、また実地臨床上有益な情報であるので論文報告した。
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