研究概要 |
我々が開発した選択的増幅遺伝子(SAG)が、in vivoで作用(造血幹細施の増幅)するかどうかを検討するため、ヒトに極めて近いNon-human Primate(カニクイザル)をモデルとして遺伝子導入実験を行った。 まずサルより採取した骨髄細胞を標的に、SAG遺伝子を搭載したレトロウイルスベクターで遺伝子導入を行った。次に致死的放射線量の照射を受けたレシピエントサルに対し、SAGを遺伝子導入した骨髄細胞を移植し、生着後経時的にSAGの分子スイッチであるエストロゲンを投与したところ。エストロジェン刺激に応じて速やかに遺伝子導入細胞が増幅されることを確認した。このことより、SAGシステムがin vivoで働くことを実証した。 さらにSAGが造血幹細胞に確実に遺伝子導入されているかどうかを確認するため、レトロウイルスベクターのインテグレーションサイト解析をInverse-PCR法を用いて検討した。この話果、遺伝子導入を受けた血液細胞は、長期的に存在し骨髄再構築をしていることを確認できた。これは造血幹細胞にSAGを遺伝子導入できたことを示唆した。(Hanazono Y. et al. Gene Ther 9(16):1055-64,2002.) サルはヒトの結果を極めて精度よく予測できるモデルと考えられており、今回我々はこの実験系で、SAGシステムが造血幹細胞をin vivo選択的増幅できることを確認した。今後はヒト臍帯血細胞を標的に検討を加える予定である。
|