1.iBMTとSAGによる遺伝子治療技術 慢性肉芽腫症などの遺伝性疾患に対し造血幹細胞遺伝子治療を臨床応用するためには、放射線照射や抗癌剤を使用する前処置はできる限り省くことが望まれる。そこで、前処置なしで造血幹細胞治療を可能にさせる基盤技術開発をカニクイザルの系で行った。 まず、前処置なしで移植細胞を生着させる手段として骨髄内移植法(iBMT)をカニクイザルで検討した。まず、レトロウイルスベクターで標識遺伝子をCD34細胞に遺伝子導入し、この細胞をiBMTで前処置なしで移植した。移植後、コロニー形成細胞(CFU)全体の2-30%が遺伝子導入陽性細胞であったが、末梢血の遺伝子標識細胞は0.1%以下にとどまった。 上記の問題を解決するために、移植後の遺伝子導入細胞を生体内で選択的増幅させる目的で選択的増幅遺伝子(SAG)を応用したシステムをiBMT系に組み合わせて検討した。これらの結果より前処置なしに生着した遺伝子導入細胞を、分子スイッチ(EPO)依存性に生体内で増幅させることに成功し、このレベルは臨床応用可能域にまで到達した。また、LAM-PCR法でクローナル解析を行い、増幅された細胞はポリクローン性増幅であることを確認した。 2.臍帯血を標的にする検討 ヒト臍帯血にSAG遺伝子をレトロウイルスベクターで遺伝子導入し、in vitroで増幅することは既に成功している。そこで現在これが生体内で可能かどうか、X-SCIDマウスに前処置なしでかつiBMT法で移植し、効果を解析しているところである。
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