研究概要 |
(1)MDS患者検体を用いたTELの機能解析:骨髄異形成症候群各病型における転写因子TELの遺伝子変異およびmRNAアイソフォームの発現パターンの差異についての検討を行った。用いた検体は、RA 6例、CMMoL 2例、RAEB 2例、MDS/leukemia 7例であり、蛋白結合領域であるHLHドメインおよびDNA結合領域であるETSドメインを対象に遺伝子変異の有無を検討したが、遺伝子変異を認めなかった。次に、DNA結合領域であるETSドメインのアイソフォームの発現パターンをRT-PCR法で検討した。すべての検体に野生型TELの発現が確認されたが、白血病へ進展した症例においてはETSドメインを全てあるいは部分的に欠いたアイソフォーム(エクソン6および7を欠失したアイソフォーム(Δ6+7)及びエクソン7を欠失したアイソフォーム(Δ7))が強く発現しており、これらのアイソフォームが骨髄異形成症候群の進展に関与している可能性が示唆された。ETSプロモータを用いたレポーター・アッセイにより、これらのアイソフォームはETS結合部位を介する転写抑制能を示さず、野生型TELの転写抑制能に対してドミナント・ネガティブに作用することが明らかになった。アイソフォームは野生型TELとヘテロダイマーを形成するが、DNA結合能を失っており、かつ、細胞質に局在していた。さらに、これらのアイソフォームはMEL細胞の赤芽球分化を抑制し、H-RASで形質転換したNIH3T3細胞に対する増殖抑制効果も消失していた。 (2)発生工学的手法を用いたTELの機能解析:TEL遺伝子のexon 6をCre recombinaseによりconditionalにノックアウトするターゲティングベクターを作製、相同組み換えESクローンを得たが、In vitroでもIn vivoでも遺伝子組み換えが正常にworkしなかった。現在、exon 7をノックアウトするためのベクターを作成している。また、TEL,ΔHLH,ΔETSをGATA-1プロモータ下に発現するトランスジェニックマウスを作製、解析している。
|