研究概要 |
日本人より樹立された多発性骨髄腫細胞株9種(KMS細胞)が、SCIDマウスに約2週間程度で容易に造腫瘍性を示すことを確認し、病理組織学的にも血管成分に富んだ形質細胞腫であることを確認した。これにより感敏な我々独自の骨髄腫モデルを作製することに成功した。細胞株の血管新生増殖因子産生について、RT-PCR、培養上清のサイトカイン濃度測定等で発現検索を行ったところ、その多くに、血管新生を促進するFGF, VEGF, HGFおよびその受容体が高頻度に発現していることが判明した。このことは、血管新生増殖因子およびその受容体を介したautocrine, paracrineメカニズムが、骨髄腫細胞の増殖に重要な役割を担っている可能性を示唆している。NK4分子は、HGFインヒビターとして開発され、ウィルスベクターを用いて、遺伝子導入が可能である。そこでHGF産生KMS細胞の担癌scidマウスに、NK4遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて、in vivo遺伝子導入した。経時的に腫瘍増殖速度を観察したところ、コントロール群に比べて有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。in vitroにおいても、NK4蛋白質はKMS細胞の増殖を抑制することを確認した。現在、NK4投与を受けたマウスの病理学的検討を進め,NK4、投与後の血中濃度を測定しpharmacokineticsを検討している。さらに、vitroでMapk signalとSTATシグナルへの影響を検討している。
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