1)細胞保護作用をもつPI3K-Akt経路の酸化ストレスによるアポトーシスにおける役割とpro-apoptoticであるJNK-AP-1経路への作用について検討するため、メサンギウム細胞にH_2O_2を投与しAktリン酸化をwestern blotにより測定した。またPI3K阻害剤wortmanninやPI3K catalytic subunit p110導入がAkt活性、JNK-AP-1経路、アポトーシスに与える影響を検討した。その結果、1)Aktは恒常的に活性化しており、H_2O_2処理で大きな変化を認めない、2)WortmanninはAkt活性を抑制しH_2O_2によるアポトーシスを増加するが、JNK-AP-1経路の活性炭に影響しない、3)P110過剰発現細胞はH_2O_2によるアポトーシスに対して抵抗性を示すこと、などが明らかになった。このことはメサンギウム細胞において恒常的に活性化したPI3K-Akt経路は、JNK-AP-1経路より下流のシグナル伝達経路に作用して、酸化ストレスによるアポトーシスに対して抑制的に働くことを示した。この結果は第45回日本腎臓学会学術総会で発表した。 2)進行性腎不全モデルでのMAPKsの発現と局在を検討するため、5/6腎摘ラットを作成し、活性型MAPKs (p-ERK、p-JNK、p-p38)の発現と局在を連続切片を用いた免疫染色法にて検討した。その結果、1)sham群では活性型MAPKsは小血管内皮や糸球体細胞に軽度に発現するのみだが、腎摘群ではこれらの発現は経時的に増加する、2)ERKとp-ERK、JNKとp-JNKは糸球体細胞と尿細管上皮に強く発現し、P38とp-p38は糸球体と尿細管以外に間質細胞にも発現する、などが明らかとなった。このことはMAPKsは腎亜全摘によるストレスに反応して発現が増加し腎障害の進行に関与する可能性を示した。
|