平成14年度では進行性腎不全モデル(Nx群)において、サイトカイン発現・アポトーシスに関与するMAPKの発現が腎不全進行とともに増加すること、それらの発現は主に尿細管に分布することを明らかにした。平成15年度では同モデルにおいて、細胞保護的に働くAkt-eNOS経路に発現について検討した。その結果、コントロール群では活性型Aktは糸球体内細胞や遠位尿細管〜集合管に発現しており、Nx群においてこれらの発現は経時的に増加していた。活性型eNOSはsham群において糸球体内細胞や遠位尿細管〜集合管に発現しており、Nx群において糸球体内では減少、尿細管では増強していた。不活化型eNOSはsham群ではほとんど陽性像を認めなかったが、Nx群の糸球体において増加していた。アンジオテンシンII受容体拮抗剤投与にてNx群のこれらのAkt/eNOS発現は大きな変化を認めなかった。これらの結果から進行性腎不全モデルにおいてAkt-eNOS経路は主に尿細管で活性化しており、腎摘によるストレスから尿細管間質組織を保護する作用をもつことが示唆された。また糸球体では腎摘によりeNOSを不活化する機序が働いている可能性が示唆された。これらの研究成果は平成15年11月にアメリカ腎臓学会で発表した。また、培養腎間質細胞において酸化ストレスがAkt経路を活性化することを明らかにした。このことは酸化ストレスがAktなど保護的な細胞内情報伝達経路のトリガーとなり得ることを示唆している。
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