腎生検にて微小変化型ネフローゼ症候群と診断した(光顕上は微小変化型で、蛍光抗体法で免疫グロブリン・補体成分の沈着を認めない)再発症例を対象症例とした。対象症例よりヘパリン加静脈血を採取、重層遠心法にてリンパ球を分離し、RPMI 1640+10% FCS培地に懸濁した後、Rhodamine 123[最終濃度150ng/ml]を培地に加え、15分間培養。洗浄後、Rhodamine 123非含有の同培地にて、上記条件下で120分間培養した。この際、verapamil 25μM添加と非添加のもので培養した。洗浄後、Phycoerythrin標識mouse-IgG抗ヒトCD3抗体にて染色し、Flow cytometerにてRhodamine 123含有細胞率を計測した。 末梢血リンパ球数およびCD3^+細胞の割合は、ステロイド依存性群:ステロイド薬減量中に再発した症例とステロイド非依存性群:ステロイド薬中止後1年以降に再発した症例の2群間に有意差を認めなかった。また、Rhodamine 123のCD3^+細胞内への取り込み(verapamil添加培養下)は、2群間に有意差を認めなかった。Rhodamine 123細胞外排泄試験の検討(verapamil非添加培養下)においては、ステロイド依存性症例では、CD3^+細胞中のRhodamine123^+細胞の割合は有意な低値(83.7士2.2% vs 51.6±3.8%、P<0.05)を認めた。すなわち、CD3^+細胞中、Rhodamine 123が細胞外へ流出した細胞の割合が有意に高値であった。 以上より、微小変化型ネフローゼ症候群症例中には、T細胞における多剤耐性蛋白質などの薬物トランスポーターの発現が増強し、ステロイド薬が細胞内に取り込まれて薬理効果を示す前に細胞外に排泄されることにより、ステロイド依存性がもたらされている可能性が示唆された。
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