腎臓の遠位尿細管に特異的に遺伝子を発現させるためにマウスClC-K1、ClC-K2、AQP-2輸送体遺伝子のプロモーター領域を単離した。ClC-K1クロライドチャネルプロモーターはヘンレ細い上行脚に、ClC-K2クロライドチャネルプロモーターはヘンレ太い上行脚と遠位尿細管に、AQP-2水チャネルプロモーターは集合尿細管に、特異的に遺伝子を発現させることが期待され、これらで遠位側にあるイオン、水輸送に重要なネフロンの部位を網羅できる。ClC-K1のプロモーターの下流にレポーター遺伝子としてGFP蛋白を接続し、トランスジェニックマウスを作製したところ、遠位尿細管に組織細胞特異的なGFPの発現を確認した。さらにClC-K1の下流にCre-ER^Tを発現させるコンストラクトを作製、トランスジェニックマウスを作製した。現在このマウスにtamoxifenを投与することにより遠位尿細管特異的にCreを、任意のタイミングで発現させることができるかを検証中である。 また、遺伝性の腎性尿崩症においてAQP2水チャネルの遺伝子異常が原因として報告されている。これらの異常を含む発現ベクターを作製、培養細胞系に遺伝子導入し、実際の細胞内での変異蛋白の発現、挙動、機能を調べたところ、変異タンパクの細胞膜への輸送の異常が確認された。さらにAQP-2プロモーターの下流にこれらの異常を含むAQP2発現ベクターを作製、トランスジェニックマウスを作製した。現在、このマウスにおいて、集合管特異的な遺伝子発現および尿崩症の病態が再現されるかどうかを検討中である。
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