研究概要 |
15.5日齢ラット胎児より後腎を摘出・培養した際のスリット膜関連蛋白の発現について検討した。nephrin mRNAの発現はラット胎生15.5日では検出されないが、胎生18.5日で確認された。また胎生15.5日から3日間培養した後腎でもnephrinの発現が確認された。自作の抗体と各種糸球体上皮マーカー抗体を用いて、スリット膜関連蛋白の発現を解析したところ、この時期にnephrin蛋白の発現が確認された。また糸球体上皮細胞関連蛋白podocin, podoplanin, podocalyxin, CD2AP, ZO-1の発現が確認された。糸球体上皮細胞には一部足突起形成が見られた。 またラット胎生15.5日胚後腎を3日間培養した後、1、5、10mg/mlPANを添加してさらに3日間培養した際の、nephrin並びに他の上皮細胞マーカーのmRNAの発現をRT-PCRにて検討した。5および10μg/mlのPANを添加した場合には器官の成長を阻害したが、1μg/ml PAN処理群と対照群では糸球体成熟度や器官の大きさに差は見られなかった。また1μg/ml PAN処理により、スリット膜機能維持に重要な役割を果たしているnephrin(67.4%to control)およびpodocin(29.2%)のmRNAの発現が低下した。しかし、他の糸球体上皮細胞関連蛋白の発現には影響を与えなかった(podocalyxin:95.3%)。このことから、微量のPANがスリット膜の分化を特異的に阻害し、スリット膜構成分子がPANに対して最も感受性の高い標的であることが示唆された。
|