研究概要 |
【目的】大規模臨床試験で様々な程度の腎障害が冠血管疾患のリスクになることが示されているが、早期腎不全における冠動脈内皮機能障害の有無、機序に関しては不明である。本研究では早期腎不全における冠動脈内皮機能について検討を行った。 【方法】成犬に5/6腎摘を施し、慢性腎不全犬を作成。ペントバルビタール麻酔下で開胸し、左回旋枝に超音波プローブをかけて、その中枢側よりアセチルコリンを投与して、冠血流量の変化を観察した。またコントロール群、慢性腎不全群の両群で血管作動性物質等の測定を行った。 【成績】慢性腎不全群ではコントロール群に比較し、血清Crは有意に上昇していた(1.63±0.02mg/dl vs 0.86±0.02mg/dl, p<0.001)。アセチルコリン投与時(0.1γ)慢性腎不全群ではコントロール群に比較し、冠血流量増加の反応が弱かった(ΔCBF%:72.6±16.9% vs 28.3%)。血清ADMAはコントロール群2.61±0.12μmol/l、慢性腎不全群3.48±0.43μmol/lと慢性腎不全群で有意に上昇していた(p<0.025)。尚、両群間で血中カテコラミン、アンジオテンシンII、エンドセリン1、総ホモシステインに有意差を認めなかった。 【結語】本研究により慢性腎不全の早期の段階で冠動脈内皮機能障害が生じており、それに内因性NOS inhibitorであるADMAが関与していることが示唆された。
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