研究代表者らは、胎児腎臓の器官培養の系においてPKCの活性化剤、阻害剤の添加により、尿管芽の分岐および進展が活性化剤で促進し、阻害剤で抑制される現象に着目し、それぞれの群からRNAを抽出し、differential display法を用いて発現の差が認められる遺伝子のクローニングに成功し、MTF(metanephros derived tubulogenic factor)と命名した。ノーザンブロット法により、MTFは成体マウスにおいて、心臓、脳、精巣、そして腎臓に発現が多いことが確認され、またRT-PCR法による検討で、腎臓の発生段階をおった発現量の変化を確認したところ、胎児腎において発現が多いことが確認された。recombinant proteinを作成し、器官培養の培地に添加することにより尿管芽の分岐および進展が促進することが確認され、一方アンチセンスオリゴヌクレオチドを作成して器官培養の培地に添加することにより尿管芽の分岐および進展が抑制されることを確認した。尿管芽分岐、進展作用を示すとともに、recombinant protein添加群では培養後腎の大きさが大きいことが確認されたため、MTFの効果が抗細胞死作用を示す、または細胞増殖を促進することにより引き起こされる可能性を考え、TUNEL法による細胞死の検討、およびthymidineの取り込みの測定による細胞増殖の検討を行ったところ、細胞死の抑制効果は認められなかったが、細胞増殖を促進する効果が認められた。
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