これまで我々は造血幹細胞を用いた骨髄改変により、抗炎症遺伝子を長期間持続的に腎臓障害部位に遺伝子を供給するシステムを開発した。そこでこのシステムを用い現在研究が進められている腎臓再生因子を腎臓障害部位の尿細管幹細胞を賦活させることが可能となるか検討を開始した。これまで腎臓再生因子として報告されているHGFを今日発現するレトロウイルスを作成し、これをマウス骨髄細胞に感染させたところ強いHGF蛋白の発現がwestern blot法によって確認された。このためこの遺伝子操作骨髄細胞を先天性腎不全マウスに移植し、障害局所でHGFを発現させ治療効果が認められるか尿中アルブミン、血中BUN、クレアチニンの測定組織学的検討などを行っている。またこのシステムは大量に自己の骨髄を必要とするため患者負担が大きいことが問題となるため、さらに臨床応用に近づける事を目的にヒト臍帯血を造血幹細胞のsourceとして用い、より患者負担の軽いシステムへの改良を試みた。ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞をマグネットビーズ法により得た後、レトロウイルスを用いてレポーター遺伝子を導入しNOD/SCIDマウスに移植することによりヒトの造血器をもったキメラマウスを作成した。このマウスにLPSを投与し糸球体のICAM-1の発現を誘導したところ、導入したヒト造血幹細胞は導入遺伝子を維持したまま炎症局所で分化することが免疫染色、western blot法、生化学的活性測定にて確認された。今後この臍帯血を用いたシステムにより腎臓障害局所再生が可能となるか検討していく予定である。
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