これまでの我々は抗炎症性サイトカイン遺伝子を導入した造血幹細胞を移植することによる骨髄改変によって、抗炎症性細胞を持続供給させ長期間実験腎炎の改善をもたらすことが可能であることを報告してきた。そこでこのシステムを用い現在研究が進められている腎臓再生因子を腎臓障害部位の腎臓構成細胞の幹細胞(または前駆細胞)を賦活させることが可能となるか検討している。これまで腎臓再生因子として報告されているHGFを強発現するレトロウイルスを作成し、これをマウス骨髄細胞に遠心法を用いて感染させたところ強いHGF蛋白の発現がwestern blot法によって確認された。このためこの遺伝子操作骨髄細胞を先天性腎不全マウスに移植し、障害局所でHGFを発現させ治療効果が認められるか検討している。これまでのところ生後8週にて骨髄改変を行うと治療効果が出る前に高度のネフローゼに陥り、これに伴う先天性腎不全にてマウスが死亡することがわかったため生後4週にて骨髄改変を行っている。HGF導入骨髄改変群ではmock導入群に比して尿細管間質の線維化の程度が明らかに少ないようであり、現在動物数を増やして統計解析を行っている。また尿中アルブミン、血中BUN、クレアチニンの測定組織学的検討などを同時に行っている。さらに昨年ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を造血幹細胞のsourceとして用いることにより患者負担の軽いシステムへの改良に成功しているため、このシステムを用いてHGFの持続投与が可能か検討を開始している。さらにマウス骨髄から得た間葉系幹細胞にLacZ遺伝子をレトロウイルスを用いて導入後移植したところ、10日後には近位尿細管の一部がLacZ陽性であることが確認された。同様の変化は虚血再還流障害を加えると増加するため、現在先天性代謝疾患モデルマウスを用い治療的尿細管再生が可能か検討している。
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