ローリングマウス(RMN)は小脳性運動失調を示すミュータントで、P/Q型Ca^<2+>チャンネルα_<1A>サブユニットをコードする遺伝子に変異がある。小脳は登上線維や苔状線維の他に、セロトニン(5-HT)線維やドーパミン線維、ノルアドレナリン線維などのモノアミン神経線維の投射を受ける。これらのモノアミンは、直接あるいは間接的にプルキンエ細胞の興奮性を制御している。RMN小脳における5-HT陽性神経線維終末の分布を調べ、5-HTの小脳性運動失調への関与を検討した。 4〜6ヶ月齢のRMNおよび正常マウスをブアン液で灌流固定し、小脳および脳幹前頭断切片を作製し、抗5-HT抗体を用いて免疫染色を行った。正常マウスでは、小脳皮質の分子層、プルキンエ細胞層および穎粒細胞層で5-HT陽性線維が観察された。5-HT陽性線維は虫部に多く分布し、半球ではわずかしか観察されなかった。RMN脳では、5-HT陽性線維の分布に異常はみられなかったが、5-HT免疫染色性は強く、正常マウスに比べて多くの5-HT陽性線維が観察された。小脳5-HT線維の起始核であるparagigantocellular reticular nucleusでの5-HT免疫染色性も正常マウスに比べてRMNで高かった。 以上よりRMNでは、小脳に投射する5-HTニューロンでの5-HT産生が高く、5-HTにより一部のプルキンエ細胞の興奮性が抑制されていると考えられ、5-HTの運動失調発症への関与が示唆された。
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