研究概要 |
3波長時間分解分光システムは、生体組織内の実効的な光路長を決定することが可能であり,この光路長情報と光拡散理論を利用して定量的な分光測定を行い,さらにHb分子の吸光係数をもとに生体内,特に脳組織の酸素代謝情報を非侵理的にベッドサイドで測定できる.しかし実際には、理論的シミュレーションと合致しない点もあり,これらの問題を解決する必要がある.特に脳内Hb測定に関する基準となる動物を含めたスタンダードモデルがなく,装置間の比較検討が困難であることが重要な課題である.そこで,3波長時間分解分光システムの臨床応用に向けての基礎的検討として,新生肝豚を用いて外来光に影響されない測定条件を満たす測定プローブの開発を行う.さらに血液の循環した状態での低酸素負荷を施行し,Hb量や酸素化状態を変化させた状態での測定を行い光路や光拡散係数と吸収係数を算出、動脈や上矢状静脈のHb酸素飽和度との関係を調べる. 1 対象は生後24時間以内の新生肝豚.気管内挿管を行い,フェンタネスト,臭化パンクロニウム使用下で人工呼吸管理とし,臍帯静脈より輸液,臍帯動脈より血圧・心拍の連続測定および採血を行う.また頭蓋骨頭頂部を開窓し,上矢状静脈洞にカテーテルを挿入する.ウォーマーを用いて直腸温を測定し調節する. 2 形状記憶樹脂を用いて、外来光に影響されない測定条件を満たす新生肝豚用の光測定プローブの開発を行う.現有の3波長時間分解分光システムは3波長パルス光源(760,800,830nm)と時間分解測定機能(単一光子検出時間相関法)を組み合わせたものを用いる.投光部と受光部問距離を30mmとし,プローブを頭頂部に矢状縫合に平行{こ装着して測定する. 3 血液の循環した状態での低酸素負荷を行い,Hb量や酸素化状態を変化させた状態での測定を行い光路長や光拡散係数と吸収係数を算出する. 4 低酸素負荷時の測定値を基に脳内Hb酸素飽和度を算出し、動脈や上矢状静脈のHb酸素飽和度との関係を調べ、今後新生児への測定を行う際の基礎的データを得る予定である.
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