研究概要 |
本研究では、(1)絨毛細胞のアポトーシスにかかわる液性因子を決定すること(2)これらの液性因子が絨毛細胞にどのような遺伝子群の発現変化をもたらすかを明らかにすること(3)これらの遺伝子群の動態を流産や妊娠中毒症などの疾患において検証し、真に発生過程の制御に必要な遺伝子を同定することを目的とした。本年度は、絨毛細胞のアポトーシスに関わる因子を決定し、これがもたらす遺伝子発現変化について検討を行った。 その結果、以下の3点を明らかにし、論文として報告した。(Fukushima et al, Biology of Reproduction, in press)。 1)TNFαは20pg/ml濃度で絨毛由来細胞株の増殖を抑制し、100pg/ml濃度でアポトーシスを誘導すること 2)このアポトーシスは細胞外マトリックスからIntegrin, PI3 kinaseを介するシグナルにより抑制されること 3)TNFαは絨毛細胞の分化マーカーであるインテグリンαサブユニット発現を転換し、βサブユニットを活性化すること またサイトカインと細胞外マトリックスが絨毛細胞に及ぼす生物学的作用について検討を加えたところ、細胞外マトリックスのうち、マトリゲルには絨毛細胞に、血管内皮細胞の特徴とされる、Tube-like formationを誘導する作用があることがわかった。先に報告した絨毛細胞の浸潤における分化とともに、この血管内皮細胞への分化における遺伝子変化についても液性因子と接着分子を中心とした制御機構について引き続き検討する。
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