肺サーファクタント蛋白質の生体防御機能の解明と臨床応用

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14770574
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 佐野 仁美 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80295344)
• キーワード: 肺サーファクタント / 生体防御 / 自然免疫

研究概要

14年度では、RSウイルス感染に対するサーファクタント蛋白質A(SP-A)の作用とその機序を明らかにするめに、1.RSウイルスにより細胞から誘導される炎症性サイトカインの発現や、細胞へのRSウイルスの取り込をSP-Aが変化させるか、2.RSウイルスの表面糖蛋白とSP-Aは相互作用を有するか、を検討した。また、こらのSP-Aの作用を、同じく気道粘膜免疫を担うラクトフェリンと比較した。
1.RSウイルスの感染によりHEp-2細胞から分泌されるIL-8は、SP-Aの存在により増加し、ラクトフェリンの在により減少した。また、FITC標識したRSウイルスの細胞への取り込みも、SP-Aにより増加しラクトフェンにより減少した。
2.SP-Aもラクトフェリンも、RSVのG蛋白およびF蛋白に結合した。しかしF蛋白との相互作用はSP-Aとラクトフェリンとで異なり、SP-Aは糖鎖が付加しているF2部分に結合し、ラクトフェリンはF1部分に結合した。また、SP-AはF蛋白と赤血球膜との融合を促進した。
RSウイルスの細胞への感染にはF蛋白が重要であり、F1部分はF蛋白の機能領域であると報告されているラクトフェリンはF1に直接結合することで、RSウイルスの細胞への侵入を妨げていると考えられた。SP-A相互作用を示すF2領域の機能は明らかにされていないが、SP-AはF蛋白と相互作用することによりウイルス細胞との融合を促進させることが示唆された。さらなるメカニズムを検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Iwaki D, Mitsuzawa H, Murakami S, Sano H, Konishi M, Akino T, Kuroki Y.: "The extracellular Toll-like receptor 2 domain directly binds peptidoglycan derived from Staphylococcus aureus"J Biol Chem. 27. 24315-24320 (2002)
• [文献書誌] Murakami S, Iwaki D, Mitsuzawa H, Sano H, Takahashi H, Voelker DR, Akino T, Kuroki Y: "Surfactant protein A inhibits peptidoglycan-induced TNF-alpha secretion in U937 cells and alveolar macrophages by direct interaction with Toll-like receptor 2"J Biol Chem. 277. 6830-6837 (2002)
• [文献書誌] Sano H, Izumida M, Shimizu H, Ogawa Y: "Risk factors of renal involvement and significant proteinuia in Henoch-Schonlein purpura"Eur J Pediatr. 161. 196-201 (2002)
• [文献書誌] Takezawa C, Takahashi H, Fujishima T, Shiratori M, Morita Y, Sano H, Kuroki Y, Abe S: "Assessment of differentiation in adenocarcinoma cells from pleural effusion by peripheral airway cell markers and their diagnostic values"Lung Cancer. 38. 273-281 (2002)
• [文献書誌] 黒木由夫, 高橋享, 佐野仁美: "サーファクタント蛋白質-D(SP-D)ノックアウトマウス"分子呼吸器病. 6. 55-60 (2002)
• [文献書誌] 黒木由夫, 百島尚樹, 佐野仁美: "サーファクタントの自然免疫"呼吸. 21. 1065-1075 (2002)