本研究の目的は、低分子G蛋白RhoファミリーGTPaseの一員RhoAの腎発生における意義を検討することである。 (1)まず、胎生14日、18日、日齢1日、成熟ラット腎におけるRhoA、ROCKの発現を、ホルマリン固定パラフィン切片を用いた免疫組織染色と、腎をホモジナイズし抽出した蛋白を用いたimmunoblotで検討した。RhoA、ROCKともに同様の傾向を示した。immunoblotと免疫組織染色ともに胎生期に強く発現を認め、また尿細管上皮細胞や腎皮質直下の間葉細胞に発現を認めた。成熟した糸球体には発現を認めなかった。 (2)次に胎児ラット後腎の器官培養を行った。妊娠14日目の胎児ラットから腎臓を顕微鏡下に摘出し、培養皿内のポリカーボネート膜上で4日間器官培養を行った。器官培養は培養液にRhoAキナーゼROCKの阻害薬Y27632を添加した群、対照群に分けて行った。器官培養後の腎臓のサイズ、尿細管の形態、糸球体の個数などを検討した。Y27632添加により、腎の培養後のサイズは増大したが、DNAの定量により検討した細胞数には変化を認めなかった。尿細管においては、特に先端に優位な形態の異常、分枝数の減少を認め、糸球体においては形成数の減少を認めた。RhoA-ROCKが細胞同士の接着因子にも関与することから、今回の結果は、細胞間の接着が阻害され、細胞間距離が開大したことに因るものと考えられた。 本年度の結果から、腎発生においてRhoA-ROCKの経路は、細胞接着を介し、腎の微細構造の構築に不可欠であることが示唆された。以上の結果は35th Annual Meeting of American Society of Nephrologyで発表した。現在、投稿準備中である。
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