本研究では、未熟な肺血管平滑筋細胞におけるATP感受性Kチャンネルを測定し、ATP感受性Kチャンネルの発達に伴う変化を明らかにした. 実験動物:生後5日の新生仔家兎と生後6-12カ月の成獣家兎を用いた.実験標本:主肺動脈および径100-200ミクロンの肺動脈より単離した平滑筋細胞を用いた.各年齢群の肺動脈よりコラゲナーゼを用い細胞を単離した.単離平滑筋細胞をもちいてパッチクランプを行った.パッチクランプ法:ガラス微小電極を用いwhole-cell voltage clampをおこなった.膜電位を-60mVの保持電位から、-80mVから+40mVの間で変え、K電流を記録した.ピペット内ATP濃度は1mMとし、pinacidilで活性化され、glybenclamideで阻害されるK電流をATP感受性K電流とした. 各年齢群とも主肺動脈にはATP感受性Kチャンネルはほとんど存在しないことがわかった.末梢肺動脈にはATP感受性Kチャンネルは存在し、ATP感受性Kチャンネルは新生仔では成獣に比べ有意に大きいことがわかった. ATP感受性Kチャンネルは低酸素状態で細胞内ATP濃度が減少すると開口し、血管弛緩の方向に働く.低酸素状態では肺動脈は収縮するが、新生児でATP感受性Kチャンネルが多いことは、周産期の低酸素状態に於ける肺血管収縮を軽減する方向に働くのに有利かもしれない.
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