副腎皮質ステロイド産生に重要な作用を有する転写因子SF-1と類縁構造をもつオーファンレセプターLRH-1は、肝臓に高い発現をもち、胆汁酸代謝に大きく関与するが、副腎にも発現していることがRT-PCR法により確認された。我々は、さらにLRH-1の副腎における機能を解析するために、副腎皮質由来の株化細胞であるH295R細胞に種々の副腎皮質ステロイド合成酵素のレポーター遺伝子を発現させ、LRH-1の共発現によるレポーター転写活性の変化を観察した。LRH-1は、11β水酸化酵素および17α水酸化酵素いずれに対しても、その転写活性を増強することが確認され、その程度はSF-1による転写活性の増強と同程度であった。11β水酸化酵素のレポーター遺伝子におけるSF-1の転写増強は、Ad5領域を介して作用することがすでに知られているが、そのAd5領域に変異を加えると、LRH-1による転写増強も消失することから、LRH-1の作用もAd5領域を介することが示唆された。現在、EMSA法によりLRH-1のAd5領域への結合を検討している。また、そのLRH-1による副腎皮質ステロイド合成酵素の転写増強は、同時に共発現させたSHP、FXRにより修飾を受けることも確認された。FXRは近年、胆汁酸がリガンドであることが発見された核内レセプターであり、胆汁酸による副腎皮質ホルモン分泌調節の臨床応用への可能性が示唆された。今後、SHP、FXRによる副腎皮質ステロイド合成への影響についても詳細に検討していく予定である。
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