前年度の実績報告において我々は、胆汁酸代謝に重要な核内レセプターLRH-1が11β水酸化酵素や17α水酸化酵素などの副腎皮質ステロイド合成酵素の転写にも関与し、副腎皮質ステロイド合成に重要な核内レセプターSF-1と同程度にその転写活性を増強することを示した。一方、同じく胆汁酸代謝に関与する核内レセプターSHPおよびFXRは、これらの副腎皮質ステロイド合成に対してLRH-1の作用に対し抑制的に働くことが確認された。SHPは、FXR作用により発現調節を受けることが示されたおり、FXRのLRH-1への作用はSHPの発現調節を介している可能性も考えられた。FXRは、ケノデオキシコール醸(CDCA)をリガンドに持つ核内レセプターであるが、CDCAを過量投与してもLRH-1への作用に変化を認めなかったことから、この作用はリガンド非存在下での作用と考えられた。また同時に我々は、クッシング症候群などホルモンの過剰産生を認める病態へのLRH-1の関与も考え、腫瘍における上記核内レセプターの発現量を検討した。非腫瘍部でやや高いSHPの発現を認めたものの、腫瘍における明らかなLRH-1の発現を認めず、ホルモン産生異常症への関与は現在のところ不明である。近年我々の研究グループは、副腎に興味深い発現パターンを示す新規転写共役因子をyeast two-hybrid法を用いてクローニングしたが、この転写共役因子がLRH-1のcoactivatorとして作用することを明らかにした。
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