近年、アルドステロン(Aldo.)の心臓への直接作用が示され、臓器障害との関連が示唆される。Aldo.にはDNAの転写を介するジェノミックアクションとそれを介さないノンジェノミックアクションの全く異なる作用機序が発表されたが、臓器障害との関連は明らかでない。本研究ではAT1拮抗薬(AT1A)の長期投与中に再上昇するAldo.の標的臓器への影響、特にジェノミックアクションの関与を明らかにするため、非降圧量のスピロノラクトン(SPRL)が臓器障害に及ぼす影響を検討した。 4週齢SHR-SPにAT1A(1mg/kg/日、p.o.)単独または非降圧量のSPRL(10mg/kg/日、s.c)と併用にて6ヶ月間投与し、血圧、心重量、心臓BNP、ET-1、心臓・腎臓type I、III collagen mRNA発現(RT-PCR)、心臓、腎組織の組織学的変化、大動脈壁厚の変化を検討した。無治療SHR-SP群の心重量、間質の線維化、心臓BNP、ET-1、type I、III collagenのmRNA発現、腎糸球体硝子化、間質線維化、尿細管萎縮、腎動脈内膜の肥厚度、腎type I collagen mRNA発現、大動脈壁厚はWKYと比較して有意に大であった。AT1A単独群の血圧、心重量、心臓BNP、type I、III collagenのmRNA発現、心臓間質の線維化、腎糸球体硝子化、尿細管萎縮、腎動脈内膜の肥厚、大動脈壁厚は無治療SHR-SP群と比べ改善を、心臓ET-1mRNA発現は亢進を示した。非降圧量SPRLの併用により、心臓ET-1mRNA発現以外の各指標はいずれも更なる改善を、心臓ET-1mRNA発現は改善を示した。AT1A長期投与に際して再上昇したAldo.のノンジェノミックアクションを非降圧量のSPRL併用により阻害することで、ARBの臓器保護作用を促進する事が示された。
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